工業用刃物の種類や選定のポイントをプロに学べる

工業用刃物なび

工業用刃物の取り扱いをする上で
知っておきたい技術コラム

工業用刃物の商社・
特注メーカーが手掛ける
刃物選定のための技術コラム集

スリッター刃による切断のポイント(紙加工・不織布加工・フィルム加工)

 

刃物屋から見るスリッター刃を使用した切断のポイントを解説!

 紙加工・不織布加工・フィルム加工業者の皆様にはおなじみのスリッター刃。ライン方向に加工物を切断する際使用するには最もポピュラーな刃物ではないでしょうか。実際にご使用いただいている現場の技術者の皆様の方が当然ご使用方法はよくご存じなのは承知の上で、刃物屋からみるポイントをご紹介したいと思います。いつもとは違った角度から、加工をチェックしてみてください。

 

 

ポイント1:セッティング(調整)

 

ゲーベル型(わん型)スリッター刃で上刃シャフト、下刃シャフトに刃物を並べてご使用の場合について記載します。この場合のセッティングで切断に大きな影響を与えるのは接圧ラップ量です。

(接圧:上刃が下刃を押さえつける力。 ラップ量:上刃と下刃が重なる量)

接圧とラップ量が大きくすると切断の安定性は良くなります。ただし、刃の寿命は悪くなります。そのため、セッティングの理想は安定して切断可能な状態で接圧とラップ量を最小限にすることです。

安定した切断が実現していない場合は見直しをされると思いますが、実現できているところでも、刃物の長寿命化のために一度ご確認されることをお勧めします。

セッティング条件は切断物や周辺部品、切断構造によって変わりますので、理想の数値があるわけではありませんし、機械によっては現場の方々の感覚で行っているところも多いと思います。

海外製の上刃ホルダー等個々で調整するタイプの場合は、接圧とラップ量に加えて挿入角等も合わせてご確認することをお勧めいたします。

 

>>>改善事例:コイルスプリングによる接圧の調整事例はこちら

 

ポイント2:刃物のメンテナンス(交換)時期

 

刃物が新品の場合や研磨修理はよく切れますが、使用するにつれ切れ味は悪くなってきます。左図は一般的な磨耗と使用時間の関係です。

交換してすぐは初期磨耗域があり、なじませる時期です。テストカットやラインスピードを落としてご利用ください。その後定常磨耗域になります。この部分が安定切断できる時間です。この部分をより長くするために刃物形状や材質、セッティングなどを検討します。

その後寿命により異常磨耗域が訪れます。ここからは加速度的に磨耗量が増えていきます。そのため、交換が遅れた場合は磨耗が大きくなり、刃物の使用回数が減ってしまいます。生産スケジュール上管理が難しいと思いますが、気持ち少し早いかなといいったところで交換いただけるとトータル的には長くお使いいただけます

また、上刃だけでなく下刃の磨耗も切れ味に影響しますので、上刃ほどでないですが、定期的なメンテナンスをお勧めします。下刃を並べてお使いのところはよく使うところと入れ替えながらご使用いただき、使用頻度の少ないところでも1年に1度は再研磨にだされることをお勧めします。

 

ポイント3:刃物形状

切断で最も影響が大きいポイントです。刃先形状は一般的に鋭角なほど切れ味が良く、鈍角なほど刃は長寿命です。また、刃の厚さは薄いほど抵抗が小さく、厚いほど剛性が良くなります。剛性が良いと振れが発生しづらくなります。

刃先形状は、切断条件によって個々に違います。弊社は再研磨加工を自社で行っておりますので、テスト研磨も含めてお試しいただけるところが強味の一つですので、ご相談いただければお客様にあったご提案をさせていただけます。

 

>>>不織布用スリッター上刃のチッピング対策・解決事例はこちら

 

ポイント4:周辺部品

 

 

スリッター上下刃と同じくらい切断に大きな影響を与えるのが、ホルダーなどの周辺部品です。より高品質な切断を実現するためには、「振れ」を減らすことが必要になってきます。刃振れを減らすためには、周辺部品の高精度化が必要になってきます。

上刃ホルダーには多品種少量生産に向いている移動式ホルダー、高精度切断が実現できる固定式ホルダー、海外製に多いホルダーユニットなどがあります。最近では弊社でも高精度ホルダーの需要が高まってきています。

現状の切断品質をもう一段高めたいとお考えなら、ぜひ周辺部品も再検討されることをお勧めいたします。

>>>改善事例:製紙用サラバネへの変更による切れ残り改善事例はこちら

特に東洋刃物製の高精度ホルダーについては、サラバネを使用するだけでなく、移動式ホルダーでどうしても課題になっていた割りを入れることでの真円度のずれ(内径が楕円になってしまうこと)を大幅に改善することでスリッターの振れの低減を実現しております。

>>>商品紹介:スリッター刃関連

 

弊社が取り扱っているスリッター上下刃と周辺部品の一部をご紹介いたします

>>>スリッター上下刃の製品詳細はこちら

>>>周辺部品の製品詳細はこちら

 

お問合せ・ご相談・サンプル申しこみはこちら

新着技術コラム

工業用刃物はこうやって作られる(刃物製造工程の紹介)

工業用刃物はこうやって作られる! (刃物製造工程の紹介)      普段ご使用のスリッター刃やカッター刃などの工業用刃物はどうやって作られるかご存じでしょうか。「四角なだけなのにそんなに・・・、丸いだけなのにそんなに・・・」と思われたことがある方も多いと思います。(私も何度そう思ったかわかりません) 刃物を上手にご使用になるためにも、製造工程を知っているこ...

刃物形状の違いによる切断工程への影響(刃物の基礎編)

切断における改善への考え方を大公開!  紙加工・不織布加工・フィルム加工業者の皆様は日進月歩の新素材への対応や、既存製品製造においても生産性の向上など様々な角度から改善が求められ、大変な思いをされていることと思います。 当サイトのコンセプトはそんな製造業者様にお役立て情報をご提供したいという想いで運営しております。当社が切断に関して大事にしている考え方をここで大公開することにしました。 ...

スリッター刃研磨のポイント(紙加工・不織布加工・フィルム加工)

スリッター刃の研磨について詳しく解説!  紙加工・不織布加工・フィルム加工業者の皆様にはおなじみのスリッター刃。一度新品を購入すると5~10回くらい再研磨加工をしながら使用してると思います。そのため安定した切断加工を行うには、研磨加工にて適切な刃付けが行われることが重要になってきます。スリッターの刃付け研磨加工について解説いたします。   1:研磨部分について ス...

工業用刃物によく使われるコーティングについて

コーティングとは 工業用刃物の表面に薄い膜をつけることで、母材(素材)の特徴を生かしながら、新たな性能を付け加えたり、素材特徴を強化したりすることです。コーティングは表面処理になりますので、再研磨を行った場合は効果が失われる場合もあります。ここでは代表的なコーティングとその特徴や効果についてご紹介します。   コーテイング種類 性能 効果 フッ素樹脂コ...

超硬カッター刃について

超硬カッター刃の使用用途 一般的に「カッター刃」は文房具などで使用されるものをイメージされる方が多いと思います。当サイトでは、一般的にイメージされている形状は「レザー刃」と呼んでいます。ここで「カッター刃」は平たい刃物全般を表すことが多く、素材に超硬が使用されているものを「超硬カッター刃」としています。 ・不織布での製品(衛生用品・おむつ・マスク等)を加工する場合 ・紙加工やフィルム...

丸刃による切断のポイント(紙加工・不織布加工・フィルム加工)

  刃物屋から見る丸刃を使用した切断のポイントを解説!  紙加工(家庭紙・紙管・帳票印刷等)やフィルム加工業者の皆様にはおなじみの丸刃。ライン方向に加工物を切断したパイプ形状のものを輪切りに切断する際に特によくご使用になっているとものです。実際にご使用いただいている現場の技術者の皆様の方が当然ご使用方法はよくご存じなのは承知の上で、刃物屋からみるポイントをご紹介したいと思います。いつ...

鋸刃の形状選定について

鋸刃の使用用途 鋸刃と言うと、一般的には木工用の“丸のこ(チップソー)”や“のこぎり”、金属切断用のメタルソー、バンドソー等をイメージする人が多いと思います。ここでは紹介する刃物は以下の用途で使用されます。 ・包装用フィルム切断 ・製紙における巻き取り替え時の切断  等   紙や包装用フィルムを切断用の鋸刃を使用する場合、以下の切り方が主流です。 ・ライン...

フィルム用レザーカット刃について

フィルム用カットの種類 包装用フィルムやラベル、高機能フィルムを切断する場合どのようなものをお使いでしょうか?大きく分けて下のような切断方法があります。 ライン方向:スリッター上下刃(丸刃)をすり合わせて切断、レザー刃を使用した空中カット 丸刃によるシェアカットはフィルム厚が比較的厚いもの、レザー刃によるカットは薄いものを切断するのに適しています。 ラインと垂直方向:平刃による...

断裁包丁における切断のポイント(紙加工・印刷)

  刃物屋から見る断裁包丁を使用した切断のポイントを解説!  印刷物、紙製品などの最終仕上げで使用される断裁包丁や三方断裁包丁。紙加工業界では最もポピュラーな刃物ではないでしょうか。実際にご使用いただいている現場の技術者の皆様の方が当然ご使用方法はよくご存じなのは承知の上で、刃物屋からみるポイントをご紹介したいと思います。いつもとは違った角度から、加工をチェックしてみてください。 ...

平刃各部の名称の紹介(紙加工・不織布加工・フィルム加工)

  刃物の基礎知識~カッター平刃編~  紙加工・不織布加工・フィルム加工業者の皆様にはおなじみのカッター刃。ラインと垂直方向に加工物を切断する際によく使用される刃物です。非常に幅広いカテゴリーになるため、ここでは平刃でよく使われる図面用語などを中心にご紹介させていただきます。打合せではよく耳にする言葉、「それって何?」とは今更聞きづらいこともあると思います。当社が使用している言葉(違...