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刃物選定のための技術コラム集

スリッター刃研磨のポイント(紙加工・不織布加工・フィルム加工)

スリッター刃の研磨について詳しく解説!

 紙加工・不織布加工・フィルム加工業者の皆様にはおなじみのスリッター刃。一度新品を購入すると5~10回くらい再研磨加工をしながら使用してると思います。そのため安定した切断加工を行うには、研磨加工にて適切な刃付けが行われることが重要になってきます。スリッターの刃付け研磨加工について解説いたします。

 

1:研磨部分について

  • スリッター上刃

 

刃表側から刃先角を1面します。しのぎがついている2段刃については、刃先のみの場合と刃先としのぎの2段する場合があります。

しのぎのある刃物でしのぎ研磨をしない場合(刃先部分のみ研磨)は、再研磨をするごとに、刃幅が広くなっていきます。そのため、新品よりも抵抗が大きくなってきます。

 

  • スリッター下刃

逃げ角の部分を研磨します。研磨するごとに間隙が広くなっていきます。

 

2:研磨量と研磨精度

下の写真は刃裏側から撮影したものです。研磨前の中央部分が摩耗している部分でこれを刃表側から刃角にそって落としていきます。

ラップ量(下刃と重なり合っている部分)が大きいと削り落とす部分も大きくなってきます。

研磨量については、使用状況によって大きく違いますのであくまで通常量です。一方で当社では刃物交換は少し早めを推奨しています。

スリッター上刃 スリッター下刃
研磨量 0.2~0.3 0.1~0.2
寸法変更部分 外径 間隙(刃厚)
研磨量に対する寸法変更量 0.5~0.7(※) 0.1~0.2
寸法合わせした場合の公差 外径D±0.05 刃厚T1±0.01

※刃先角60°を0.2㎜~0.3㎜研磨した場合、外径が0.5㎜~0.7㎜小さくなるということです。刃先角が鋭角になると外径はもっと小さくなります。

 

3:再研磨加工でできることと、できないこと

<再研磨加工できること>

スリッター上刃の同径研磨、スリッター下刃の厚み合わせ研磨

スリッターの上下刃は上刃ロール、下刃ロールにそれぞれ組み込んで並べてお使いになることが多いです。そのため、セッティングがロール一括で行われるため、一緒に使用するものは上刃は同径で、下刃は厚み合わせで仕上げることがあります。

上刃を同径で仕上げることで、ラップ量が最小限に抑えられます。また下刃を厚み合わせすることでスリット幅の誤差を最小限に抑えられます。

>>>改善事例:スリッター刃セット研磨による刃持ちの改善事例はこちら

 

研磨角度の調整

何もご指示がない場合には再研磨加工は現状と同じ角度で加工します。切れや刃持ちの調整などで変更する場合があります。

>>>改善事例:スリッター上刃のしのぎ研磨による切れ味改善事例はこちら

面粗度の調整

面粗度とは研磨面の粗さのことです。 特殊仕上げとしてSF(スーパーフィニッシュ)仕上があります。

SF仕上げは通常より高い面粗度にすることで、切断カス(紙粉など)の発生を抑制したり、刃先の仕上げ状態を通常より均一にさせたりします。

フィルム切断や特殊紙のスリットなどに使用されることが多いです。

>>>改善事例:スリッター研磨面粗度変更による紙粉の抑制事例はこちら

 

<再研磨加工できないこと>

・スリッター上刃刃裏の傷修正

スリッター上刃の刃先の傷の要因として、刃裏面側に縦に傷ついていることが大きく影響しているものがあります。刃裏面は研磨をしないため研磨部分以上に縦筋がついている場合は傷が残る場合があります。傷を全部除去する場合もありますが、研磨量が大きくなり使用できる回数が少なくなりますし、研磨量が大きい場合は追加費用をいただく場合があります。また使用限界を超える場合は研磨不可になる可能性もあります。

多くの場合は傷が残っても刃はつきますので、縦筋が残ったままの仕上げにしていきます。

・下刃外周面の傷修正

外周研磨は可能ですが、下刃を並べてお使いの場合、下刃外径が変わるとスリット加工に影響する場合が多いため外周部分の修理は行わないことが一般的です。もし製品に傷がついてしまうようであれば、一度ご相談ください。

・振れの修正

新品や使用途中ででも内径精度が悪かったり、厚み方向に歪(ひずみ)が発生することによって、振れが生じてしまう場合は研磨修理では修復できないケースがあります。そのため、新品の精度が重要になります。

 

4:刃物の管理(錆の対策)について

スリッターの再研磨を行った後に防錆油を塗布してラミネート紙に包装して納品させていただいています。交換頻度が高い上刃は1か月程度、下刃は6か月程度はそのまま保管いただければ、錆びずにご使用いただけます。

錆はゴミが付着したまま保管すると発生しやすいです。一度錆が発生して根をはってしまうと、研磨しても錆部分は崩れてしまいチッピングしたような状態になり、もとに戻すことはできません。

使用後再研磨に出すまである程度の期間保管する場合は、ゴミ・汚れを拭き取ったり、刃物を包装するなど錆対策を行っていただけるとトータルの使用期間(購入から廃棄まで)は長くなります。

 

弊社が取り扱っているスリッター上下刃、研磨加工の一部をご紹介いたします

>>>スリッター上下刃の製品詳細はこちら

 

合わせてご参照ください

>>>技術コラム:スリッター刃による切断のポイント 

>>>技術コラム:研磨加工設備のご紹介はこちら

 

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